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50 影

 Kさんのお母さんが買い物から帰ってくると、急にこんなことを言い出した。

「さっきAさんに会ったんだけど。あんまり長くないかも知れないわ。」

 Aさんは特に持病を患っている人でもない。体調が悪そうにでもしていたのか聞いてみた。

「いや、別にそう言う感じでもないんだけどね。変なのよ。影が無かったの。」

 周りの人や物にはしっかり影が出ているが、Aさんの足元には影が無かった。奇妙に思ったが、不吉な感じがしたのでAさんには言えずに帰ってきたのだという。

 数日後、Aさんは急に病みつき、病院に入ったものの帰らぬ人となった。

 

 その後も同様の事が度々起こった。

 Kさんのお母さんが、影がないと言うと、その人は決まって近いうちに亡くなった。

 お母さんは、幾人かの死を言い当てたのち。

「やっぱり、こういう事は誰にも言っちゃいけないね。口に出すとみんな亡くなっちゃうわ。」

 と、影の話をしなくなった。

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