46 FAX
「姉さん。母さんの戒名がわかったら教えてほしいんだけど。」
母が亡くなった際、Kさんに東京で暮らす弟から電話がかかってきた。
「電話で伝えて漢字間違ってもいけないから、後でFAX送っておくわ。」
そう約束した。
字を間違えないよう注意して戒名を写し取り、FAXを送った。
数分後、電話が鳴った。
「はい、Kです。」
「あ。わたくし島根の○○ですが。」
聞き覚えのない声だった。島根に知り合いもいない。Kさんは聞き直した。
「あの、失礼ですがどちら様でしょうか。」
「あ、やっぱりそうですよね。突然お電話して申し訳ありません。
つい先ほど、うちにFAXが送られてきまして。それが心当たりのない物だったので、送信元の番号にかけてみたんです。
どなたかにFAX送りませんでしたか?戒名のように見えるんですが。」
「あら、すいません。私送り間違えたんだわ。」
「やっぱりそうでしたか。内容が内容なもので気にかかってしまって。」
「お知らせくださってありがとうございます。ご迷惑お掛け致しました。」
「いえいえ。それでは失礼します。」
全く、自分はどう打ち間違えたんだろう。
電話を切り、送りなおす前にFAXの送信履歴を見てみた。
弟の家の番号が表示されている。
送り間違ってはいない。
ともかく、もう一度同じ番号にFAXを送り、今後はこちらから弟の家に電話をかけてみると、義妹が出た。
「あ、FAX届いてます。ありがとうございます。」
「あぁ良かった。それ二枚届いてる?」
「いえ、一枚だけみたいですけど。」
「そう。ううん、それならそれで良いのよ。」
電話を切り色々考えてみるが、どうにも腑に落ちない。なぜ弟の番号に送って島根に届くのか。
もう一度、電話をくれた島根の方に状況を聞いてみれば何かわかるかもしれない。
電話の着信履歴を開いた。
そんな着信履歴は無かった。