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43 タマちゃん
Tさんは、毎朝近くの公園を掃除している。
ある朝、掃除に行くと公園の入り口にある石の台の上で、ぶち猫が寝ていた。
その猫は公園に棲む野良猫の一匹で、近所の人々はタマちゃんと呼んでいる。
タマちゃんは随分と前からこの公園に棲みついている。もう二十歳は越えているだろう。あまり活発には動かない。
「タマちゃん、おはよう。」
声をかけて、いつものように掃除を始めた。
しばらくすると、近所の男性が紙コップにコーヒーを淹れて持ってきてくれた。少し休憩しようと、二人で入り口近くのベンチに座ってコーヒーを飲みながら世間話をした。
そのうち、タマちゃんが起きてピョンと台座から降りた。そのまま公園内の通路を進んで、真ん中辺りまで行くと立ち止まった。
二人で何気なくそれを見ていると、タマちゃんの近くで何かがキラリと光った。
何が光ったのかと見ていると、またキラリと光る。
その光は段々と数をまし、キラキラとした光の粒にタマちゃんが包まれていく。
その中で、タマちゃんの体のぶち模様が徐々に薄れて行き、ついには真っ白な猫になった。
うわ、あの子キレイ。Tさんはそう思った。
とても二十歳のおばあちゃん猫には見えない。若々しく、それでいてなんとも色っぽい艶のある姉さん猫だった。
少しの間美しい姿を見せたが、光が収まるのに合わせてぶち模様が浮かび上がり、タマちゃんはいつもの姿に戻った。
「今の見た⁉キレイだったねぇ。」
「あぁ、あんなの見たの初めてだよ。すごかったねぇ。」
おじさんと二人、興奮気味にそう言いあった。
残念なことに、暫くしてタマちゃんが亡くなっているのが見つかった。
その公園には今でも数匹の猫が棲みついているが、Tさん曰く「タマちゃんに比べると、あの子たちはまだまだ」だそうだ。
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