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35 夕焼け

 Kさんの育った町は湾に面している。

 

 まだ幼かった頃、そろばん塾からの帰りの事。

 海沿いの道を近所の友達と一緒に、そろばんを玩具にしながら歩いていると。

「あっ!あれ!」

 と誰かが指差した。

 指差された方向を見ると、岬の奥にある小島に大きな火が灯っている。

 その火は空を飛び、湾の上をまたいで、反対側の山に落ちて姿を消した。

「火の玉だー!」

 みんなそう叫びながら家に逃げ帰った。

 

 それからしばらくの間、そろばん塾の帰りはみんな怖くて下を見ながら帰った。

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