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怪談記
行脚記
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Kさんの育った町は湾に面している。
まだ幼かった頃、そろばん塾からの帰りの事。
海沿いの道を近所の友達と一緒に、そろばんを玩具にしながら歩いていると。
「あっ!あれ!」
と誰かが指差した。
指差された方向を見ると、岬の奥にある小島に大きな火が灯っている。
その火は空を飛び、湾の上をまたいで、反対側の山に落ちて姿を消した。
「火の玉だー!」
みんなそう叫びながら家に逃げ帰った。
それからしばらくの間、そろばん塾の帰りはみんな怖くて下を見ながら帰った。