Aさんがまだ五歳だった頃。
三つ年上の兄が風邪をこじらせ、肺炎に罹ってしまった。
母が布団の中で眠っている兄を看病している。
その横でAさんは、暇を持て余していた。
お兄ちゃんが病気だという事は分かっていたが、遊び相手もおらず、お母さんもかまってくれない。
やる事もなく、部屋のあちこちをただボーッと眺めていた。
すると、視界の端から何かが飛んで来た。
オレンジ色のぼんやりとした大きな光の塊。
Aさんはそれをじっと見つめた。
光は目の前を横切り、障子をすり抜けて、表へ出て行った。
振り返ると、動かなくなった兄の手をきつく握りしめ、母が泣いていた。