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31 十二月二十四日
十二月の頭に、Wさんは老人ホームに入っているお父さんの様子を見に行った。
近頃あまり喋らなくなっていたお父さんが、しきりに何か言っている。
「分かってる。分かってるから何回も言うな。」
「お父さんどうしたの?何?」
聞いてみても、分かってる分かってると、同じような言葉を繰り返した。
何度か聞き直すうちに
「分かってるって言ってるだろ。二十四日にいくから。」
と、日にちが出てきた。
今は十二月。十二月二十四日。
クリスマスイブには老人ホーム内でクリスマス会が開かれ、家族みんなで参加する予定だった。お父さん勘違いしてるんだなとWさんは思った。
「クリスマスはどこかに行くんじゃないよ。みんなが来るの。ここでみんなでパーティーするんだよ。」
そう伝えたが、お父さんは相変わらず同じ言葉を繰り返して、あまり会話にならなかった。
「分かったから。二十四日にいくって言ってるだろ。もう黙っとけ。」
十二月二十四日は、お父さんの告別式になった。
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