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3 トイレ
Dさんがまだ小学生だった頃。
休み時間のうちにトイレに行っておこうと席を立った。
彼女は、学校に限らず集合トイレに入る時、いつも一番奥の個室を使うようにしていた。なぜだかわからないが落ち着くのだ。
トイレに入ると、四つある個室の扉はすべて開いていた。ラッキーと軽い足取りで奥へ向かう。
入ろうと思っていた個室の一つ手前を通り過ぎる時、中に誰かが立っているのが視界の隅に映った。
血まみれの女の子。
「キャー!」
思わずトイレから飛び出した。
廊下でへたり込んでいるDさんを見つけて先生が駆け寄ってきた。
「どうしたの?大丈夫?」
「血!女の子!」
そう言ってトイレを指差すのが精いっぱいだった。
誰かが怪我をしたのかも知れないと思ったのだろう。先生がすぐに中を確認してくれたが、誰もおらず、どこも血に汚れてはいなかったそうだ。
しかし、二十年以上経った今でも、アレが見間違いや気のせいだったとは思えないとDさんは言う。その学校はまだ開校間もない頃で、校舎も設備もきれいで、怖い噂など全く無かった。
見たのは一瞬だったが、赤いスカートにおかっぱ頭の女の子で、顔も体も血にまみれていて、黄色い帽子を被っていたのを強烈に覚えている。
当時も今も、その学校で黄色い通学帽やヘルメットなどは使われていない。
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