17 エレベーター
Fさんが、彼氏のマンションに泊まりに行った時の事。
夜中にのどが渇いて目が覚めた。
水でもいいが、何かジュースを飲みたい気分だったので、表へ買いに行くことにした。
彼の部屋は三階で、一階まで下りればすぐに自動販売機がある。
エレベータに乗り、一階のボタンを押した。
下がり始めたエレベータはすぐに減速して扉が開いた。階数表示は二階。
誰か乗ってくると思い、一応開くボタンを押しておいた。
だが、誰も乗ってこない。
外をのぞくと、暗いエレベーターホールに女が立っていた。
長い髪で白のワンピースの女。胸元にヒラヒラとしたフリルがついている。
ボタンを押して待ったが、女はうつむいて突っ立ったまま動こうとしない。
Fさんは少しきつい口調で、
「下ですけど、乗ります?」
と聞いた。
女は目を合わそうともせず、小さく首を横に振った。
閉じるのボタンを押して、一階に降りた。
(なによあの女。ボーッとしちゃって。ボタン押し間違えたのなら一言いえばいいじゃない。)
イライラしながらジュースを買って戻ってみると、エレベーターは一階に止まったままだった。
乗り込み、三階のボタンを押す。
途中、窓から二階のフロアが見える。
女はまだそこに立っていた。
エレベータは二階で止まらず、そのまま三階に着いた。
部屋に戻り、缶ジュースを飲みだしたが、イライラが収まらない。
(あいつなんなの気持ち悪い。降りるんでも上がるんでもないなら、ボタン押さないでよ。こんな時間にあんなとこで何してんのよ。)
そんな事を思っているうちに、ハッと気が付いた。
このマンションの二階はワンフロアー全て使った貸しスタジオである。夜間の営業はしていない。本当に何をしているんだろう。
気味が悪くなったFさんは寝ている彼氏に声をかけた。
「ねぇ、変な人がいるから一緒に見に行って。変な女が二階にいたの。」
彼氏が眠そうに言う
「ん、女?それってあれか、ロングで白のワンピースか?」
「そう!知ってるの?あれ誰?」
「あぁ。それ、幽霊だから見に行っても仕方ないよ。」
彼氏自身はまだ見たことが無いが、マンションの住人が度々目撃している幽霊なのだと説明された。