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12 神葬祭
Sさんの実家は大きな神社である。地域の氏神で、宝物の中には国の重要文化財に指定されている物もある。
宮司をしていたお祖父さんは、長く真っ白な髭をたくわえた仙人のような人で、Sさんを大変かわいがってくれた。
そんなお祖父さんが亡くなったのは、Sさんが五歳の頃である。
神道と仏教では葬儀の意味合いが違う。仏教の葬儀が故人を仏のもとへ送る儀式であるのに対し、神道の葬儀は故人を守り神として家に留まってもらう儀式である。
神道の葬儀でも通夜が行われる。
お祖父さんの通夜祭には、多くの人が集まってくれた。
幼かったSさんは、通夜から抜け自分の部屋で寝ていた。
夜半、トイレに行きたくなって目が覚めた。
廊下に出ると、窓から境内と拝殿が見える。
拝殿と住居兼社務所の間は、渡り廊下でつながれている。
その渡り廊下を、拝殿の方から誰かが歩いてくる。
亡くなったお祖父さんだった。
怖くは無かった。
あっ、おじいちゃんだ。
ただそう思って見ていた。
長く真っ白な髭で、真っ白い衣を纏った、おじいちゃん。
お祖父さんは渡り廊下をゆっくりと進み、こちらの建物に入ると、奥へと消えて行った。
お祖父さんの顔は、とてもにこやかだった。
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