Ａさんは清掃業をしていた事がある。

 

　とある企業の資料館で掃除をしていた時の事。

　トイレの掃除を終え、次に移動しようと視線をあげると、廊下を歩く足が見えた。

　足しか見えなかった。

　膝から下の足だけが、廊下を歩いていく。

　驚いて廊下に出ると、足は入り口のホールへと向かって、見えなくなった。

　膝から上が無かったのではっきりとは言えないが、あれは〝兵隊さんの足〟だ。

　Ａさんはそう思った。

 

　怖かったがどうにも気になった。

　ビルに長時間詰めている警備員なら何か知っているかも知れない。変な人だと思われるかも知れないが、勇気を出して聞いてみた。

　声をかけた警備員は、「自分は見たことが無いが、前任の警備員がそれと同じものを見ている。」と教えてくれた。